家でBイと話した。最近はBイと話すのが楽しい。「調子はどう」と聞かれたので、いいよ、と言ったが、「ああ、でも今朝アダルトスクールの先生に退屈そうだといわれた」と言った。たぶん疲れているから、と。
 もうちょっとリラックスしたほうがいいといわれた。私が勉強しすぎだと思っているのかもしれない。勉強はもちろん大事だけど、エンジョイすることのほうがもっと大事、だと。そして第二言語は特に難しいといっていた。Bイの息子と娘は、子供の頃から毎日2時間日本語の学校へ行かせたと言っていた。それから、家では絶対に中国語を使わせたらしい。なぜならBイが中国語を忘れてしまうのがいやだったからだそうだ。忘れてしまったのを取り戻すのはすごく大変だが、キープするのはそれほど大変ではない。だから家では中国語だと。つまりBイの子供は英語、中国語、日本語の3つを使いこなすということだ。2人の娘の日本語はそれほどでもないらしいが、息子は日本語が達者らしい。日本の漫画が好きだといっていた。
 せっかく力説してもらったので、私に子供ができたら、英語のスクールに通わせることにしよう。


 ここへ来ていろいろな人に会った。ハワイにいる間の短い時間を、好きじゃないない人と過ごすのはもったいないので、私はできるだけ話したい人とだけ話すようにしている。話したくても話せないという人もいるにはいるが。
 アダルトスクールのSヴはその一人である。彼は早くも尊敬できそうな人の一人である。ああいう生き方はとても素敵だ。会社をリタイヤしてから、英語スクールのボランティアと、友達とのビリヤードで過ごす日々。私も日本語の教え方くらいは学んでおいたほうがいいかもしれないと思った。いくら日本語を話せても教えるとなるとそれなりのスキルが必要だろうし、一度教えるためのノウハウを覚えれば、外国の友達ができたときに教えてあげられるではないか。また、ある程度年をとってからやる仕事としてはなかなかいいかもしれない。
 Lイはとてもよい先生である。単語の説明を短いセンテンスで説明するのが上手だし、生徒の質問を正しい英語で繰り返してから答えてくれるので、とてもわかりやすい。それはものを教える人の基本だとは思うが、できていない人は多いのだ。
 Kumu HulaのMichaelも大好きな人の一人だ。フラをとても愛しているように思えるし、お金の損得抜きにフラを教えている。たまにジャージのラベルが腰の辺りから見えていることがあったり、振りもたまに間違えたりしてすこしだけ抜けていそうなところもあるが、それもキュートといえばキュートだ。
 NICEのMツさんとJンさんは、なかなか素敵なおっさん二人である。まだ40なので私から見たらおっさんではないかもしれない。10歳くらいしか違わないのだから。Mツさんはラジオやテレビの番組を作る仕事をしており、そのために英語が必要になってきたらしくとてもがんばって勉強している。だからアダルトスクールにも行って英語を勉強しているのだ。Jンさんは冗談が楽しいし、仕事もしているし家庭も持っている。そして母国語である韓国語と、さらに日本語が流暢に話せるらしい。
 残念なことは、NICEの日本人の若い子でいいな、と思う人がいないことだ。まだあまり話していないのでわからないだけかもしれないし、ただみんなが私に比べて若いだけなのかもしれない。
 私の世代と、20歳そこそこの世代で決定的に違うのは、やはり働いた経験があるかどうかということだろう。働くということは、人が生きていく上でとても重要な位置を占める経験なのだと思う。
 留学というのももちろんとても大きな経験だが、ハワイで留学というのはやはり生ぬるすぎると思う。私はストイックなものを求めすぎだろうか。あるいはハワイをまだわかっていないのか。しかしNICEのクラスメイトに聞いたが、NICEの中でしか友達がいないというのだ。せっかくハワイに留学に来ていて、同じ学校にしか友達がいないというのは少し寂しくはないだろうか。しかもその子はもう一年も留学しているのに、だ。みんながみんなそうではないだろうが、そういう人がいるということだ。
 もし私がまだお金も時間もあり、さらに留学できるとしたら、そしてフラをやっていないとしたら、違う場所に留学すると思う。ただ、フラのことを考えるとハワイがベストなので、すべてを含めるとなかなか難しい選択である。
 最近、日本に帰りたいなあとよく思うが、フラのことを考えると、あと1ヶ月ちょっとで終わってしまうのはあまりにも寂しすぎる。
 なぜ日本に帰りたいかというと、もうハワイが日常になってしまったからだ。毎日が楽で、英語の勉強はしたいが、日常が繰り返されているだけなのである。そして学校にはたくさんの日本人。学校の人たちのことをだんだんわかってきて、好きな人が増えるのは楽しいが、それがそれほど有意義なことという気がしない。
 そして一番はおそらく、NICEの先生であるBイが好きではないということだろう。これが一番の問題である。しかしあとちょっとなので大した問題ではないといえばそうである。だだ、先生のことを好きであれば、毎日が楽しかったはずなのに、と思ってしまうのは当然であろう。